ティアマリア・エステミロワ3巻
極限の悪意。
「どうして父上は、奴らを殺してくれないの? 母上に、あんなひどいことをした奴らを」
リュドミラの幼なじみアンゲルが士官学校を去ったその日、リュドミラは夢を見た。
故郷で、アンゲルとの初恋が生まれた日。
ちょっと背伸びをした、10歳の夏。
優しい父と母に囲まれた穏やかな日々。
そのすべてを失った、戦争という極限の悪意。
悪意は、人の本能として受け継がれる。
貴族学生の陰謀を、ティアマリアは偶然知ってしまう。
それは、試験選抜者たちを士官学校から放逐し、ティアマリアを死を願うような目に合わせるというものだった。
ティアマリアは、リュドミラの力を借りて試験選抜者たちに結束と対策を呼び掛けるが、己に恃むところの多い彼らは力を合わせようとしない。
試験選抜者は、ひとりまたひとりと大陸軍士官学校から姿を消していく。
貴族たちの巧妙な方法に、ティアマリアたちはなすすべもなく戦力を減らしていった。
試験選抜者たちとリュドミラの、秘められた過去の物語。