崩壊世界のアノミーは心の在り処を示せるか

著:しろいるか絵:旅行
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崩壊世界のアノミーは心の在り処を示せるか

著:しろいるか絵:旅行

──人間を、あきらめるな。

鉄、砂、炎、水ーーー。
あらゆる物質へと肉体が置き換わる奇病『境界性乖離症候群』の蔓延により、崩壊してしまった世界。滅亡に向かう人類は、寄り集まり世界各地に独自の自治区『アノミー』を形成した。そのアノミーにおける労働力として、死体を繋ぎ合わせることで作り出された自我を持たない生体道具『バイオトミー』の一体、個体番号『69番』は配達の仕事を行っていた。その帰り道、69番は偶然にも空から落ちてくるものーー水との境界を失った少女プリンシパルーーを助けてしまい……。
自我を持たない少年と余命わずかな少女が、崩壊世界の真実に挑む!第一回小説下剋上コンテスト最優秀賞受賞作、ここに開幕!

読者の感想

心の在処を示せるのか?
久しぶりに先の読めない展開の物語に出会いました。飛ばし読みなんてできない、全ての言葉に意味があり主人公たちに「心の在処」を問いかけていくストーリー。 ジェットコースターみたいな緩急で、最後まで全力疾走で楽しめる作品だと思います。 読み終わって最後表紙を見ると、最初のイメージと違う雰囲気に見えて二度美味しいです♪(私だけかもしれませんが) 最後の方少しうるうるしましたが(ネタバレ防止で詳しく言えませんが)是非読んでいただきたいです。
世界の全てが込められて照射されている物語
PCに行こうと思っていましたが、今スマホで読み終わったところでのレビューです。ネタバレは防ぐ派ですが、それではこの作品の凄さが半減するので、しっかり書かせていただきます。大丈夫です。その上でもきっと読みたくなるでしょうから。 この世界を外側から見たときに分かる「概念」。ここが重要です。内側からでは決して見えないんです。タイトルを見てみると「心の在り処を示せるか」です。表紙から見ると主人公たちが在り方を模索するように思えるのですが、ここにSFハードコアを覆す仕掛けがされています。余談ですが示し申すものとして神。神は概念。そしてキーワードの天使のあるパーツ(伏せます)が出て来ます。通常の空の歪んだ概念。それを引き起こした原因と引き継がれるもの...そういった全ての心を照射して物語は強く訴えて遠くに消えゆくような静寂さで終わります。 人の境界線を越えてしまった物質、それに戻ろうとする人の心、捻じ曲がってしまった元凶の想いと虚構になるアノミー。あとはこの概念SFという物語に是非心で触れてみてください。読んで良かった!と思えます。しろいるか先生、流石です。ハードコアでジワジワ読んでいましたが、世界を照射した渾身の概念SF最高に面白かったです。ありがとうございました。
心をえぐるような傑作SF小説
まず本作を読むのにあたっては、これが「下剋上コンテスト」の大賞作である、ということを念頭に置いておく必要がある。いい意味で、非常に挑戦的で、意欲的。わかりやすく美少年、美少女が無双するストーリー求める人は回れ右をしたほうがいい。しかし、心をえぐるような傑作を読みたい人はーーようこそ、アノミーの世界へ。 ジャンルとしてはSFで、雰囲気はパニック物だろうか。世紀末的世界観、ディストピア、空気の匂いまで伝わってくるような生々しい舞台において、容赦のない物語が展開される。 キーワードともなる「境界」という言葉は、特に死と生についても意識させられる。登場人物が死ぬ時、そこに慈悲はない。ただ淡々と、最期の瞬間を迎える。生と表裏一体で死が存在しており、さっきまで躍動感たっぷりに動いていたキャラが、あっさりと「境界」を越えて、物言わぬ肉塊と化す。それは時としてぞくりとするほど美しく、むごたらしい。だからこそ、ラストに意味が生まれてくる。 実のところ、こういう小説が読みたかった。変にこちらの顔色を窺うことなく、自由に、制限なく紡がれた、果てしない世界の広がりを感じさせる物語。この作品が下剋上コンテストの大賞として選ばれた理由が、とてもよくわかる気がする。 なお、一度目の読破では、まだこのアノミーの世界を完全には理解しきれていない。とにかく勢いで読み切ったが、隠された秘密などを全て把握した上で、もう一度頭から読み返したいと思っている。それだけの面白さが、この作品にはある。 気になっている方は、ぜひ読んでみてほしい。オススメの一冊だ。
それでも、と少女は言った。それでも、と少年は伝えた。
丁寧なパニックSFを軸に、何故そうなったかを概念の変化、一つの違いから世界はどうなるか(見事なまでに表現しきった作品です。 無駄のない物語、変化の理由、設定の表現もさることながら生体道具である主人公たち。69とプリンシパルの恋でもなく、愛でもなく。気がついた時にはこんがらがって互いに変化を及ぼす関係性と、それによってもたらされる変化とそれに伴う痛みの末に残るものは、何か。 アノミーは、社会は本当に心を置くのにふさわしい場所なのか。 ぜひ、読んで確かめてください。
ハッとさせられる、“未体験の概念”との出会い
友人からの紹介と、あらすじの面白さに惹かれて読ませていただきました。 初めに、私がこのお話から感じたことを挙げさせていただくと、「未知への興奮」「覆せない残酷さ」「人間の本質」「愛情」といった感じです。 特に「未知への興奮」は、お話を読む中で、最後まで一貫して感じていたことで、大変刺激的かつ魅力的な要素でした。レビューのタイトルに書いた「ハッとさせられる、“未体験の概念”との出会い」というのも、「未知への興奮」に深く通ずるものであり、私はこのお話の中で、それ(“未体験の概念”)に出会い、心を動かされました。 今まで考えたことのない世界(及び概念)に触れることは、私にとって大変有意義なことであり、「こんな考え方したことがない!」と驚きに心を躍らせながら読み進める時間は、とても楽しいものでした。 また、上記で「人間の本質」と記しましたが、登場人物一人一人の葛藤や愛情がダイレクトに伝わってくる描写が、とても味わい深く、時には思わず目を伏せてしまいそうになるほど感情を刺激されました。危機的状況に置かれた時にこそ見える、人間の本質とはどのようなものなのか。そんなことを考えさせられました。 最後になりますが、全体を通して「疾走感」を纏っているのもこのお話の魅力だと感じました。「未知」が段々と解き明かされていく切迫した場面も、誰もが生きようと必死に足掻く場面でさえも、どこか思い切りのいい「疾走感」を纏った文章に感じられて、読者である自分もその場で一緒に走り抜けているような、そんな感覚を感じられました。非常に刺激的な体験、そしてワクワクする未知との出会いを、ありがとうございます。
「しろいるか」さんは、やっぱり「くろいるか」だった件
 表紙絵の華やかさに騙されてはいけません。この作品は、食事を済ませてから読んだほうがよいとアドバイスしたくなるほど血と肉にまみれた黒SFです。戦闘に継ぐ戦闘の連続をくぐり抜けて戦場帰りのような心持ちであとがきにたどり着き、ふと思うことがありました。この物語は、崩壊してしまった作者さんが人間の心を取り戻すまでの物語なんだなって。あのかじり取られた空は、きっと作者さんの心そのものなんだなって。  Book Base 社長のオタクペンギンさんがTwitterのスペースで「この作品を小説下剋上コンテストの最優秀賞に選んだことの意味合いを一緒に噛み締めてほしい」と言っていました。噛み締めました。そして未読の方にもぜひ噛み締めてほしいと思います。人間という存在の境界が崩壊した世界において、作者はどんな希望を示そうとしたのかと。  読み終わった瞬間に見上げた空は、血の色ではなかったよ、しろいるかさん。
何も言えないけど、絶対に読んで欲しいSF
魂が震えました!! まさか、こんな展開になるとは!! これは何も言えないけど……読めとしか言えませんね。 私は好きです。清々しいまでの物語。SF好きは、ぜひ見て欲しい。 ちょっとハードな内容ですけど、最後は空が見えます。 そして、ラストまで読んで、もう一度、表紙イラスト見てください。それまでがセット!! ふわあああ、凄い凄いです!! ぜひ、色んな方に読んでもらって、語り合いたい。 あああああ、なんていうか、いいよ、いいよ!! ナギさん好き。ウォーカーさんも好き。ユカリたんも好き。ファムさん、渋くて好き。ムクも好き。なにより、プリンシパルも好き。 ん? プリンシパルって確か……。 とにかく、読んでもらいたいです、ぜひぜひ、気になったら、手にしてください。 そして、青い空を眺めるのです。生きててよかったって思いますよ。ええ、ええ!!
けっこうハードな展開
『鋼殻のレギオス』みたいな、終末世界だけど派手な戦闘とハーレムあり展開を勝手に妄想しながら読み始めたんですが全然違いました(笑) 『バイオハザード』とかの方がかなり近い気がします。かなりハードな展開でした。 後半の怒涛の展開は面白かったです。作中の色々な用語の真実がヒョイヒョイ繋がって行く感じはなるほどーーという感じでした。戦闘シーンはとても迫力があります。 気になる点としては、視点が頻繁に入れ替わるので、「あれ、いま誰の視点だったっけ?」と混乱することが何度かありました。あとは、主人公がもうちょい活躍してほしかったという感じでした。
本当の人間は誰か?
撃て撃て! ギャー! グチャッ! っていう感じであっちもこっちも容赦なく引き裂かれていき、全て剥ぎ取られた絶望と死の淵で、最後に胸に残る何かの尊さを存分に味わえました。人間性の揺らぐ世界で、本当に人間なのは誰か、最後まで人間で居られるのは誰か、とハラハラしました。キャラクターたちにとって重大な事件も、別のアノミーで生きる者にとっては、まるで関心のない、そもそも知ることすらない出来事かもしれません。そういう世界の広がりと残酷さを、最後に感じさせてくれました。
まるで長編アニメ映画を観ているかのよう。
初めて触れるジャンルでしたが、〈境界性乖離症候群〉や生体道具〈バイオトミー〉などの世界観が作り込まれていて流石といった感じ。ニヒルな女医といった風情の「母さん」や、飄々とした態度の「死体売り」の男。突如現れる異形の脅威。そして道具としての主人公と水との境界を失いつつあるヒロイン。魅力的なキャラクターもさることながら、〈境界性乖離症候群〉の真の姿に意外性があり、今作の要の一つにもなっているのが興味深かった。その真相がクライマックスの「崩壊」の描写にも繋がっていて、某アニメ大作のラストさながらの情景を彷彿とさせ、その壮大な幕引きに彩りを添える。冒頭と終幕とで、主人公とヒロインの属性が対照的になっているのが印象的でした。